pop

相変わらずなぼくら

「じゃあ、後で」
明らかに怒っていることを隠そうとしない電話の向こうの声に、
なんとなく笑っちゃった。少し前までは、怒るとか笑うという
感情の昂ぶりを失った様に、体中に影を感じさせた彼女が、
昔と同じ様に怒ったりしている。それが嬉しかった。

「こんばんは」
ドアを開けると同時に唇を尖らせてそう言って、ズンズン部屋の奥に
入っていった。子供みたいに拗ねた顔しているのが、また可笑しかった。

「あーもー、聞いてよ!」
聞かない、なんて言わせない剣幕で一気に捲くし立てられた。それも
延々と一時間以上。これならトークショーの仕事もこなせるね、なんて
ぼんやり思いながら。
ちなみに怒っている理由は、マネージャーさんとの趣味の違いという、
とてつもなくしょうもない話。それに付き合う私って偉いよね。

「お腹空いたー」
散々っぱら人に愚痴を聞かせといて、今度はご飯の催促、私はあんたの
飼育係かい!?と毒づいて、しっかり用意しておいた料理を並べると、
『パクパク』と漫画みたいな音が聞こえるよう食べっぷり。
食べ終わったらきっと「眠ーい」だな、このパターンだと。