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吉澤ひとみ的

私には兄弟がいない。

だから、同じ親から生まれた存在が自分以外にいる、その感覚がわからない。
だから、吉澤の受けた衝撃や心の痛みを理解することは難しい。

でも、推し量ることは出来る。少なくとも家族を亡くすという
ことが、生きているのが当たり前である存在が、ある日を境に
失われるのは、恐ろしい喪失感があるだろう。
それが、親ならば年齢的、または生物的な順序からしても、ある程度
理解できなくもない。
ただ、それが自分が生まれた時からずっと側で成長を見てきた弟、となれば、
容易に受け入れ難いものだろう。それは、現実ではないと思えるほどに。

それでも、彼女はプロであることを優先させた。
それは、ステージに立てば悲しい顔も悲痛な雰囲気も許されない事を
承知の上で。
それが、吉澤ひとみ的な答えなのだから。